「KIRISHIMA RANCH」は、2016年に「霧島和牛」の繁殖・肥育からスタートしました。都城市高崎町の牧場で牛にとってストレスフリーな環境づくり、栄養管理を徹底しています。
そんな自社で大切に育てた霧島和牛を楽しむことができるレストラン「The TERRACE」を宮崎市にオープン。生産から商品開発、販売まで一貫して手がけています。
スタート時点では、牧場に携わった経験者がゼロという状態から、たった5年ほどでこれほどまでに躍進した「KIRISHIMA RANCH」。ビジョンを形にしてきた根底には、「持続可能な社会を築くために貢献する企業でありたい」とSDGsで掲げる目標に真っ向から取り組む姿がありました。
「The TERACE」の美味しいランチをいただきながら、その取り組みを見ていきましょう。
- 随所に感じる「SUSTAINABLE/ FARM TO TABLE」
ランチをオーダーすると運ばれてきたランチョンマットに、「SUSTAINABLE/ FARM TO TABLE」とメッセージが書かれていました。
まずやってきたのは、その名も「サスティナブルスープ」
口に運ぶと、とっても優しい味わいのスープ。ごぼうが驚くほど柔らかく、野菜本来のうまみを味わえます。
レストランのサラダや付け合わせで使用する野菜は、どうしても芯の部分や端材が残ってしまいます。The TERRACEでは、野菜はほぼ捨てることはありません。
一度乾燥させて、このサスティナブルスープに変身します。出汁をとって、シチューなどをつくるときにでる牛のブイヨンを足してつくるスープは、胃に優しく染み渡り、このあと運ばれてくるお料理をますます楽しみにさせてくれます。
次に運ばれてきたのは、たっぷりのサラダ。
実は、こちらのサラダにも「KIRISHIMA RANCH」のこだわりがあります。
自社牧場から生まれた堆肥を契約農家のかたへ配り、野菜やお米づくりに再利用しているのです。そして、大切に育てられた新鮮な野菜を購入し、レストランで使用するという地域の循環がうまれています。
お次は、いよいよ今日のメイン!
霧島和牛 本日の赤身薪焼きステーキです。この日は、うちももの赤身でした。
メイングリルに薪を使用するのも、化石燃料への依存を減らし、積極的に自然エネルギーを使用したいという思いの現れ。それだけでなく、薪で焼くことで余分な脂が落ち、薫香のあるしっかりとした肉の旨味を味わうことができます。
もちろん薪も宮崎県産。山間部でとれる間伐材をメインに使っています。他にも、カトラリーのボックスやパーテーション、テーブルバインダーに宮崎の飫肥杉が使用されているなど、随所に地域資源を活用しています。お会計のときにレシートをもっていかずに、こんなかわいい木の札だと遊び心も感じます。
自然豊かな空間に囲まれていただくランチは、心もお腹も大満足。大切な人を連れていきたいお店です。
ランチ後には、KIRISHIMA RANCH株式会社の統括マネージャー 柳澤浩司さんにお話を伺いました。
【経産牛の価値をちゃんと届けたい】
「ランチで使われる霧島和牛は、子牛を産み終わった雌牛である「経産牛(けいさんぎゅう)」とよばれるものを使用しています。
これまで「経産牛」というと、役目がおわった脂ののっていない牛という位置付けで、とても価値が低いものでした。そのイメージから、経産牛は美味しくないという方も。
私たちは、そんな経産牛を抗生物質やホルモン剤が入っていない配合飼料を6ヶ月間しっかり食べさせて、じっくりと再肥育しています。そうすることで、サシの多い和牛とは違った旨味のある肉質に育てることができました。」
と教えてくださった柳澤さん。
実際に未経産牛(左)と経産牛(右)を見比べてみると、一目瞭然!
サシの旨味を味わえる未経産牛と、食べ応えのある経産牛を食べ比べると、「経産牛のほうが好き」という方も多いんだとか。
東京の有名シェフも「KIRISHIMA RANCH」が育てる経産牛の美味しさに感動して以来、使用している方もいらっしゃいます。
【SDGsをみんなで勉強して、工夫しています】
「経産牛を手がけはじめたときには、まだSDGsという言葉はそれほど浸透していませんでしたが、レストランを立ち上げるときに経営理念を見直しました。
SDGsという切り口を入れたところ、達成するために必要なことがたくさんでてきました。私たち自身も学び続け、うかんだアイディアを少しずつ形にしています」と語る柳澤さん。
実際に、畜産というと過酷な労働をイメージされがちですが、SDGsの目標である「働きがいも経済成長も」という観点から、残業ゼロ、週休二日を実現させています。働く人もその家族も幸せで健康であるからこそ、持続可能であること。
他にも、牧場で働く人がレストランにきてお肉の説明をしたり、逆に飲食店で働くスタッフさんが牧場の研修を体験するなど、「つくる責任 つかう責任」を果たせる工夫をしています。
「生産から加工、販売まで手がけている私たちだからこそできることはたくさん。まだまだやりたいことがあります」と笑う柳澤さん。
SDGsをど真ん中において取り組む姿勢は、他の企業でも学ぶことがたくさんあるなと感じました。
(インタビュアー 長友まさ美)